Findy Engineer Lab

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キャリアへの焦燥感を成長の糧に。新卒2年目で直面した不安を払拭するため、こにふぁーさんが試行錯誤してきたこと

株式会社Kyashでプロダクト開発をしている@konifarです。新卒でソフトウェアエンジニアとしてのキャリアを開始して、Kyashは4社目です。社員数3人から3,000人くらいまで、いくつかの規模の会社を経験してきました。

いま思い返してみると、自分はこれまでソフトウェアエンジニアとしてさまざまな焦りを感じてきて、それを何とかしようといくつかの選択をしてきました。特に規模の小さなスタートアップにいると事業やキャリアに対して焦りを感じることが多く、毎度不安になって、どうしようかと考えてきました。

そこで、何社かのスタートアップを経験した自分が、日々感じてきた焦燥感とどう向き合ってきたかを綴っておこうと思います。個人の経験や感情の話になるので全てが参考になる内容ではないと思いますが、皆さんが今後よりよい選択をする上で少しでもお役に立てれば幸いです。

ソフトウェアエンジニアとしての焦燥感と付き合いながら、スタートアップで身近な人が使うサービス作りを楽しむ

社外の人と関わって視野を広げる

新卒で働き始めて2年くらいたった頃、「開発は少し慣れてきたものの、果たして自分はソフトウェアエンジニアとして成長しているのだろうか?」と漠然とした焦りを感じ始めました。今ではそういった焦りを1on1での対話で解決している会社も多いかもしれませんが、当時の自分には相談の機会がなく、このままでいいのだろうかという気持ちだけが大きくなっていきました。

思い悩んだ結果、「仕事以外の組織や技術のことを知らな過ぎるから漠然と焦ってしまうのだ」と考え、とりあえず月一くらいで社外のイベントに参加してみることにしました。今思えば少し短絡的な気もしますが、漠然としんどい状態よりはまずは何か行動した方がマシだと考えたわけです。結果からいうと、この選択は自分にとってよい方向に働きました。

最も影響を受けたのは、土日2日間でプロダクトを作るハッカソンへの参加です。当時の自分は社内フレームワークの上でWebアプリの一機能を作る仕事がほとんどで、0からサービスを作ったことがありませんでした。一方そのハッカソンでは、チームメンバーの一人がRailsでプロダクトを作ってHerokuにデプロイし、数時間でそれなりに動くものが自分のiPhoneで見れる状態になったのでした。

普段から不勉強だったというのもありますが、これは自分にはかなり衝撃的な体験で、なんだか違う世界を垣間見たような気持ちになりました。自分はRubyを書いたこともなくサーバーサイドは役に立てそうになかったので、かろうじて使ったことがあるjQueryとjQuery Mobileでフロントエンドを書いたりしましたが、開発の速さについていけず歯がゆい思いをしたのを覚えています。

こういった経験を繰り返して、社外の人と関わって視野が広がったことで、自分のスキルやキャリアに対する漠然とした不安が少しずつ明確になってきました。自分の力量のなさに対する焦りはむしろ大きくなりましたが、なんとなく焦っているという状態からは一歩進んだ形となりました。

当時は初めてのハッカソン参加で、緊張して途中で帰ってしまおうかとすら考えていましたが、勇気を出して参加してよかったと今は思います。

社外の人にも分かるアウトプットをする

イベントを通して社外の人と関わる中で、toCのWebサービスを作っている人たちに対する憧れが大きくなり、社員数3人のスタートアップに転職しました。そこでしばらく働いていると、今度は別の焦りを感じるようになりました。文章では説明しにくいのですが、自分が何者にもなれない焦りみたいなやつです。

スタートアップで働くと濃い経験ができて成長するという話を目にしたことがありますが、実際に何社かのスタートアップで働いてきた経験を振り返ってみると、必ずしもいい話ばかりではありません。人・物・金すべてのリソースが限られている中で、やることはたくさんあり、広く浅くいろいろなことに手をつけなければならないことも多々あります。

その結果「いろいろやってはいるけれど、自分は器用貧乏にすらなれていないただの貧乏ではないか?」みたいな焦りを感じてしまうことがあります。そういう時に、大きな会社でひとつの技術を深掘りして知見を公開している人を見たりすると、もうめちゃくちゃ焦ってしまうわけです。周りから見るとそんなに気にするようなことでもないかもしれないんですが、当人からするとだいぶつらいんですよね。

そんな焦りを感じる中で、当時自分が始めたのは、とにかくまず発信してみることでした。自分がすごいと思う人は、皆ブログやQiitaで知見を共有したりイベントで登壇したりしていたので、まずは形からでも真似してみようと思ったことと、 そういう個人の活動が会社の採用にも効くんじゃないかと当時のCEOと話していたのがきっかけです。

  • ブログをとりあえず1ヶ月、毎日書く
  • 半年くらい、月に2回Androidのイベントで登壇する

具体的にはこの2つを始めました。理由は特になくて、定量的に測れてちょっと大変なくらいの目標にしよう程度の気持ちで決めたものです。

自分は、ブログをちゃんと書くのはこれが初めてでしたし、登壇のときも毎回緊張で吐きそうな気持ちでした(今でも登壇は同じように緊張します)。それでもキャリアに関する焦りを漠然と感じている状況と比べると、精神的にはまだ楽だったので続けられたのだと思います。

アウトプットを続けたことによる変化

この選択も、結果として自分にとってよい方向に進むことになりました。

体外的に分かりやすいアウトプットがあると、転職やフリーランス転向の際にも、自分のことを知ってもらいやすいので役立ちます。これは自分だけかもしれませんが、「実際に転職する気はなかったとしても、いざとなれば自分のアウトプットを見せて転職できる」という感覚が、日々の業務の中で心の余裕となって支えてくれるように思います。

そうは言っても、体外的なアウトプットが苦手だという方も多いと思います。「こんな内容は誰でも知ってることなんじゃないか」「自分くらいのレベルで発信するのは気が引ける」と感じて、怖いような恥ずかしいような気持ちが常につきまとうかもしれません。自分も途中で手が止まってしまったり、公開を躊躇したりすることはよくあります。

しかし、自分の経験からすると意外と誰かのためになったりするし、何か間違っていたりもっといい方法があったりした場合には、つよい人ほど優しく教えてくれます。過度に心配する必要はありません。未来の自分を含め誰か1人の役に立てばいいやくらいの気持ちで、気軽にやってみるのがおすすめです。

メンバー個々人の発信が採用活動につながることもあるため、そういった活動を後押ししてくれる会社が多くなってきたように思います。転職の際には、そのあたりの会社としてのスタンスを確認してみてもいいかもしれません。

結果の詳細や状況の変化は、当時のブログにもまとめています。

焦りを解消できる環境に身を置く

アウトプットを続けていると自然とインプットも増え、やればやるほど世の中にはすごい人がたくさんいることを思い知らされます。そんな中で、日本語の環境でしか働いたことがない自分に対して強烈な焦りを感じるようになりました。最新の情報は常に英語でキャッチアップする必要がありますし、国外でも通用するようにならなければそのうち成長が頭打ちになってしまうのではないかと思ったわけです。

同時に、少人数のスタートアップにいたこともあって、層の厚いAndroidチームで働くことに対して強く惹かれるようにもなりました。レベルの高いメンバーのコードを読んだり、レビューしたり、議論したり、雑談したり、そういうことができるチームで働いてみたいという気持ちが次第に強くなり、3社目の転職を決意したのでした。

転職先に決めたのはロンドンに本社があるスタートアップで、GitHubやSlackのやりとりは基本英語、Androidチームは自分を入れて7人という大所帯でした。当時英文を読むことはできましたが、日常会話も話せないレベルだったので、最初にチームメンバーとリモートで話したときはめちゃくちゃ緊張したのを覚えています。

この会社には1年半くらい在籍しましたが、退職するときには、入社前に感じていた焦りはだいぶ小さくなっていました。職場は日本だったとはいえ英語環境でもやっていけたという経験と、優秀なAndroidチームで働いて、また少人数でやりたい気持ちになったという心境の変化が大きな理由です。

あくまで自分の場合ですが、焦りを感じたときにはそれを解消できる環境に身を置くように行動して、一度経験してみるのがよいようです。

今所属しているKyashでも「少人数の組織だと不安になったりしないですか?」と聞かれることがありますが、小規模・中規模それぞれのチームで一度は働いた経験があるので、そこまで不安になることはありません。むしろ今はKyashくらい小さめの組織で働くことに心地よさを感じています。

しんどい時にふんばりが効くくらいの報酬を確保する

2社目で年俸を2/3くらいに下げて転職をした経験に基づく話なのですが、報酬はそれなりにもらえるように交渉しておいた方がよいです。自分のキャリアやスキル面で焦りを感じたとき、そこに報酬面での不安や不満があると、精神的に追い詰められて余裕がなくなってしまうからです。

入社してしばらくの間は人間関係も仕事内容も全てが新鮮で、不安に思うことはあるものの、たいてい楽しく働けるものです。しかし、しばらくたって環境に慣れ始めると、多かれ少なかれ不満や焦りが出てきます。そういった状況をいち早く察知して手を打つため、各社入社後に定期面談などを実施していると思いますが、報酬面については入社後簡単に変えられないことが多いです。

例えば、何かしんどい時にGAFAの報酬に関する記事を読んで心がざわつくこともあるでしょう。自分は何をやってるのかとつらい気持ちになることもあるかもしれません。

もちろんお金は全てではありません。最低限生活できるくらいもらえていればいいという人もいると思います。特にスタートアップに就職するのであれば、ある程度報酬が下がることを覚悟の上で入社する人も多いでしょう。

自分は今までの経験から、どんなによさそうな職場であっても仕事や人間関係に少し疲れることはあると思っています。その上で、そういう時でも最低限ふんばりが効くくらいの報酬をもらえるように、入社時に交渉した方がいいという考えになりました。交渉の仕方はケースバイケースですが、対象がスタートアップだとしても、将来の不安要素を想定して条件を提示しましょう。

なお、もし転職で報酬をぐんと上げたいのであれば、そもそも事業で利益を出している会社を選ぶ方がよいので、そのあたりも考慮した方がいいかもしれません。

事業全体より自分の領域に集中する

現在、Kyashで決済サービスを作っていると、「次から次へと生まれる決済サービスや還元合戦に巻き込まれて不安や焦りはないか」と聞かれることがあります。スタートアップに入社する場合、事業の成功については特に気になる人が多いと思います。もちろん自分もそうです。

ですが、いわゆるFintechサービスの中で生き残れるかという点については、正直そこまで不安に感じているわけではありません。事業全体の行く末は経営判断によるところが大きく、ソフトウェアエンジニアとして働いている自分は、いかに素早くよい形で機能をユーザーに提供するかに集中した方がいいと割り切っているからです。

CEOやProduct Ownerの判断を信頼していて、まあ任せておけばいいかと半ば楽観的に考えていると言っていいかもしれません。逆にその信頼が薄まれば、一気に不安が大きくなる可能性もあります。つまり、一緒に働く経営陣やメンバーが信頼できるか次第という話で、自分はいま運よく信頼できる状況にあるというだけです。

これは持論ですが、信頼は適切な説明による納得感の積み重ねによって醸成されます。「なんだかよく分からないけれど締切だけが決まっている」「誰が使うか分からない機能を作ることになっている」といったことが積み重なると信頼は揺らいでいきます。

そのため、背景に納得できなければProduct Ownerに説明をしてもらい、納得した上でタスクに取り組むようにしています。面倒に思えるかもしれませんが、ここをしっかりしないとそのうち信頼が揺らぎ、不安を感じてつらくなってしまうからです。これは不安や焦りに対する自分なりの先手と言えます。

入社する前に信頼感を見極めるのは非常に難しいので、もし可能であれば業務委託などで数ヶ月一緒に働いて見極められるといいかもしれません。ミスマッチを事前に防ぐという意味でも、最近はそういった提案に協力的な会社も増えてきている印象です。

自分や近しい人が使うサービスを作ることの楽しさ

自分の経験をもとにいろいろと書いてきましたが、今でもスキルやキャリアについて焦りを感じることは多いです。これまでスタートアップで都度必要な技術だけを学んで何とかやってきたため、ソフトウェアエンジニアとしての基礎部分がすっぽり抜け落ちている感覚もありますし、知人の活躍を見てふいに自分は何をやっているのかと焦ることもあります。

一方で、いくつかの焦りを乗り越えてきた分、以前ほど不安にならずに楽しい部分に目を向けられているとも感じています。

楽しいと感じる基準は人それぞれですが、今の自分にとって一番大きいのは、自分や近しい人が使うサービスを作っているという点です。自分自身がKyashのヘビーユーザーですし、妻も普段から使っています。ありがたいことに、ソフトウェアエンジニアの知り合いもたくさん使ってくれています。

大学時代の先輩が実はKyashを使っていて、10年ぶりくらいにKyashで応援の送金をしてくれたこともありました。息子の出産のブログ記事を見て、面識のないユーザーからお祝いの送金をいただいたこともあります。家で妻に新機能の話をして、「よさそう。その機能はいつリリースされるのか?」と煽られるのも楽しさの1つです。

自分の経験上、どんなに焦りを感じていても、今やっていることが完全に無駄だったということはありません。アウトプットを増やしてみたり、環境を変えてみたり、いろいろと試行錯誤して焦りを少しずつ解消しながら、スタートアップでの開発の仕事をこれからも楽しんでいきたいと考えています。

個人的な話ばかりになってしまい、果たしてこの記事が誰かの役に立つのか正直自信がありませんが、同じような焦りを感じている方が、今後よりよい選択をする上で少しでも参考になれば嬉しいです。

編集:はてな編集部

Kyashの自席といただいたぬいぐるみ
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