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インフラエンジニアは高給だけど面白くない!? インフラエンジニアのキャリア最前線

Enginner Next Labのイベントプランニング兼ライターを担当しているフリーランスエンジニアの桑原@bouzjpと申します。

2019年11月19日(火)に主催:品川区・五反田バレー、会場:AWS Loft Tokyo、運営:ファインディで「インフラエンジニアのキャリア最前線@AWS 〜アーキテクト、マネージャー、フリーランスが語る〜」を開催いたしました。

本日はなかなか語られることのないインフラエンジニアのキャリアについてスポットを当ててお話をお伺いしました。前回に引き続き貴重な情報をお届けできる内容となっております!

スピーカーのご紹介

塩谷 啓氏(クラスメソッド株式会社 チームリライアビリティエンジニア)

f:id:bouzjp:20191122104632p:plain prismatix開発チームの生産性を向上するために採用、技術広報、チームビルディングを推進。
前職のドワンゴでは技術コミュニケーション室の室長として、エンジニアの生産性を上げるミッションに活動。

Gavin Zhou氏(フリーランス)

f:id:bouzjp:20191122104639p:plain 2016年に株式会社Orangesysを立ち上げ、Kubernetesの運用、DevOps、監視などのサービスの提供を主に行う。
また、スタートアップのインフラ技術顧問、インフラ構築、オンプレからクラウドまでインフラ周りのアドバイザー、構築を専門としてWebアプリのインフラだけでなく、仮想通貨の取引基盤のインフラ構築など幅広く携わる。

塚田 朗弘氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 シニアソリューションアーキテクト)

f:id:bouzjp:20191122104707p:plain 2015年8月よりアマゾン ウェブサービス ジャパン株式会社のソリューションアーキテクトとして、主にスタートアップ領域のお客様に対する技術支援を担当。
技術的な得意/興味領域としては、サーバレス・モバイル系テクノロジー、カスタマーエンゲージメントソリューションなど。

パネルディスカッション

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インフラの面白さとは?

―― Gavinさんはインフラの道一本で10年以上のキャリアを歩まれているわけですが、これまでのキャリアで一貫して感じられるような、インフラの面白さとは何でしょうか?

Gavin氏:
いきなり申し訳ないんですが、インフラはつまらないです。
すごく地味で地道で達成感のない仕事なんです。
しかしながら、当然ですがインフラがないとプロダクトも組織も成立はしません。
私がこれまでインフラをやってこれたのは、プロダクトや組織の下支えになることにやりがいを感じてきたからだと思っています。

―― インフラの面白さを語って頂きたいのですが...塚田さんはいかがでしょうか?

塚田氏:
ボクもどちらかというとソフトウェアエンジニアなので、個人的にはインフラが好きというわけでもないんですよね…
というのも、AWSの登場前のインフラ労働は、例えばデータセンターの中のラッキングなど「付加価値のない誰がやっても同じなんだけど、やらなければならない重労働」が占めていた部分が大きかったのです。

そういったことは全てAWSで解決して、インフラエンジニアとして本当に価値のある仕事をしましょうよ、という提案をしたのがAWSだった訳ですが、例えばDBの設計やチューニングやキャッシュ戦略などの、そのサービスならでは付加価値を作れるインフラエンジニアリングなら、楽しんでやれるかなぁと思います。

―― 塚田さんはあらゆる会社さんのインフラを支援する立場な訳ですが、そういう観点では面白さはありませんか?

塚田氏:
スタートアップのひとつの通過点として、上場やバイアウトを目指す訳ですが、それらをいかに支えられるかには非常にやりがいを感じています。
数年前に支援させて頂いた会社さんが上場されて、追々AWSとしてインタビューさせてもらうこともあるのですが、それはまるで自分ごとのように嬉しく思います。

AWS登場前と後のインフラの変化について

―― AWSが登場する前からインフラエンジニアをされてきたGavinさんにお聞きしたいのですが、AWSの登場前と後での変化について教えて頂けないでしょうか?

Gavin氏:
AWSの登場前は、会社員でない人間がデータセンターを行き来するなんてことはありえませんでした。
企業として要求されるセキュリティ条件を満たすことができないので、インフラエンジニアのフリーランスは成立しなかったのです。

また、AWSの登場によって我々インフラエンジニアがAWSと顧客の間に立って、前時代に比べて非常にパフォーマンスの高い仕事ができる環境が整ったと思います。
AWSの登場は私から見るとまさしく産業革命であると思っております。

インフラエンジニアの単価事情

―― ズバリ、インフラエンジニアとは儲かるんでしょうか?

Gavin氏:
フリーランスになる前、32歳のときは会社員だったのですが、年収は700万円でした。
状況を細かくお話ししますと、会社はジャスダック上場を目指しており、インフラのチームは5人、インフラの規模はオンプレ、クラウドの両方を含めて1,400台でした。
フリーランスになった後は、ミニマムの月単価として100万円から相談を受け付けています。

―― ちなみにJavaScriptとRuby、AWSの単価データがこちらになります。
このデータを見ると、平均単価、最高単価ともにAWSのエンジニアは良い単価で仕事ができるようですが、体感値としてはどうでしょうか?

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Gavin氏:
体感値としてはあっていると思います。
AWSを扱えるフリーランスなら80万円からスタートできるのではないでしょうか?

もうひとつクラスを上げたいなら、リリースとメモリキャッシュをどう使い分けるのかとか、DynamoDBとRDSをどう使い分けるのか、などの提案ができるレベルは必要かと思います。

比較にJavaScriptを出されておりますが、JavaScriptはフレームワークの数も膨大ですし、キャッチアップが非常に大変であるように思います。
私はAWSの開発以外に、PythonとGoも扱っておりますが、開発環境がある程度限定されているため、学習ルートを迷うことは少ないです。
あとは地道に真面目に学習を続けることが大切ですね。

―― 塩谷さん、会社員のインフラエンジニアの観点から待遇についてご意見頂けますか?

塩谷氏:
会社員の場合に給与を上げる方法は、今いる会社で給与を上げる方法と、転職の際に前職見合いで給与を上げる方法の2つになります。
ただどちらの方法でも給与を上げる要素はレアリティなんですね。

世界一Reactが扱えるエンジニアは高いでしょうし、ブラックベルトに書かれていることができるAWSエンジニアは普通でしょう。
なので自分の好きなこと、やりたいことだけでなく、周りを見てどうしたら自分のレアリティが上がるのかを考えなくてはなりません。

例えばインフラエンジニアなんだけどJavaが少し書けるので、スタックトレースのログを見るだけではなくて、ソースコードまで踏み込んでアプリケーションエンジニアと話ができるとひとつレアリティが上がりますよね。
自分の軸となるスキルを持った上で、少しずつトゲを生やしていくイメージです。

組織・事業フェーズによる要求事項の変化について

―― 組織や事業フェーズの変化が激しいスタートアップにおいて、インフラエンジニアに期待されるパフォーマンというのはどのように変化していくのでしょうか?

塩谷氏:
事業が大きくなるとデータ量とトラフィックが増えますが、インフラ以外にも様々な環境の変化が起こり始めます。
人材としてはこの変化に適応して行かなくてはならないのですが、どのように適応するのかといえばエンジニアとして引き出しを増やすことです。
引き出しの増やし方は先ほどお話しした通りです。
以前携わった事業ではAWSのマネージドサービスもガンガン使って、ソリューションアーキテクトさんにも毎日来てもらってなんとか間に合わせました。
そしてその後はビジネスとしてコストを抑えていこうという流れができたときに、例えばログの粒度を下げてみようとか、いろいろな施策を自ら実行できるエンジニアが生き残っていけるのだと思います。

塚田氏:
ちなみにAWSのソリューションアーキテクトへの相談は無料です。
それと、AWS Loft Tokyoで作業をすると、作業の合間にAsk An Expertで相談に乗ってもらったりできるため、オフィスで悩みながらAWSと格闘するより相談しまくった方が断然お得です。

―― 塩谷さんからは人材に求められる変化について語って頂いたのですが、インフラへの要求事項の変化についてお聞きしてもよろしいでしょうか?

塚田氏:
最初のフェーズはスケールを考えてもしょうがないので、お金のない状況でもいかに早くトライアンドエラーを回すのかが全てです。
その後のフェーズとして、プロダクトが少しずつマーケットにフィットするようになると、インフラもグロースの方に進んでいきます。
このプロダクトでいけそうだと判断できるフェーズであったとしても、まだまだトライアンドエラーが必要ですし、この後控えているグロースフェーズを見据えておく必要があります。
こうやっておけばグロースフェーズでも耐えられそうだよね、という話はよくしますね。

シリーズAのアクセル踏む手前のタイミングで、ベストプラクティスに則ってしっかりと設計をしたり、ときに作り直すこともあります。

スタートアップのフェーズによって、最優先で行うべきことを意識しながら、その後のフェーズにどう繋げるかを考えるられるように、いつも支援させて頂いています。

キャリアで最も重きを置いていることは?

Gavin氏:
これは非常に重要な質問だと思います。

一つ目に心の強さです。
特にインフラの仕事では心の強さが大切です。
インフラで発生する障害というのは規模が大きいものもあり、そのような障害に立ち向かわなくてはなりません。
顧客から責任を問われることだってあります。

二つ目に学習量です。
中国では「9.9.6」という言葉が流行っていまして、これは朝の9時から、夜の9時までを週6日繰り返す、という意味です。
もちろん無駄な残業は推奨できませんし、日本で同じ働き方をしろというわけではないですが、生産性の高い仕事を大量にしているとキャリアでも大きな差は生まれてくると思います。

塩谷氏:
エンジニアはスキルで飯を食う仕事なのですが、スキルのポータビリティを意識することが大切です。
その会社固有のスキルに尖りすぎても、他所で通用しなければツライ思いをします。
どこに行っても通用するスキルを持つこと、そしてそれを日々の仕事を通して得ていくことを意識しています。

そのためにはアウトプットが必要なので、仕事でコードを書くだけではなくて、例えば技術ブログを書くとかしてください。
ブログを書くと、適当な記事を書きたくないのでより詳しく調べてみる。

それと先ほどもお話ししましたが、やはりレアリティです。
例えば私の場合は技術だけではなく、人前で話すことも始めました。
技術のことがわかり人前で話すことができると、採用や技術広報も任されるようになりました。
ひとつのことを磨き続けることも大事なのですが、掛け算をすることでより大きな効果が得ることができます。

若手エンジニアに伝えたいこと

―― 最後に皆さんから、若手エンジニアにお伝えしたいことを自由に語ってください。

Gavin氏:
是非英語を扱えるようになってください。
私もそんなに得意ではないんですが、やはり英語は重要です。
英語ができるだけでインフラエンジニアの単価は大きく変わってきます。
また、多くのエンジニアはQiitaのような日本語の情報に頼りがちですが、やはりGitHubで次元の高い情報を確認できる能力が必要です。

塩谷氏:
私が若手の方にお伝えしたいことは、未来なんて誰にもわからないということです。
ソフトウェアエンジニア、インフラエンジニアで定年を迎えた人はあんまりいないです。
クラウドインフラエンジニアであればなおさらですよね。
つまりボクらの仕事はロールモデルがないんです。
そしてロールモデルのない仕事で生き残っていく為には変化を楽しむことです。

例えばサーバのラッキングが必要なくなったときに、自分の仕事がなくなったから落ち込むのではなく、楽になった分AWSを触ってみようとか、常に新しいことにチャレンジすることを大切にしてください。

塚田氏:
時代がどのように変化しても、エンジニアとしての基礎力、応用力、学習力は常に必要になります。
これらは後に回すより、若いうちに抑えておいたほうが良いです。

もうひとつは、お金のことをもっとちゃんと考えておけばよかったと思っています。
例えばスタートアップで働くなら、ストックオプションか株をちゃんと持たせてもらえるのか、ということを若手の方はしっかり考えた方が良いです。

質疑

インフラの必要な開発や改善について上層部に理解してもらうには?

―― インフラの必要な開発や改善について、その重要性をなかなか上層部に理解してもらえません。そのためのアプローチや工夫などあるでしょうか?

塚田氏:
私はソリューションアーキテクトとしてAWS導入のご提案をすることがよくあるのですが、上層部は上層部の目線で見て考えているので、彼らと同じ目線を持つことがひとつ大事なことなのだと思います。

その上で伝え方として、例えば現在のビジネス課題はこうなので、そこから逆算・細分化するとこういう課題があって、もしくはこれから起きてくるので、それに対してどうアプローチするのか、というストーリーがすごく重要です。

事故が起きないことがインフラエンジニアのバリューのはずなのに、と思われているところもあるのですが、例えばサービスレベルを握っておくとか、エラーバジェットを考え方から共有しておくとか、事前に指標を作って情報として共有することが重要です。

けど、そんな簡単に行ったら苦労しないですよね。
そう思いますし、わかります(笑

最後に

今回はインフラエンジニアにスポットを当て、異なった背景を持つ御三方に登壇頂きました。
インフラのプロフェッショナルであるGavinさん、プロフェッショナルなエンジニアであると同時に組織・チーム作りもされてきた塩谷さん、ソリューションアーキテクトとして外からインフラを支援する塚田さん、キャリアも背景も異なれば当然アドバイスも変わってきます。

それはオーディエンスの皆さんの目指すキャリアもそれぞれ異なるため、それぞれにとって必要な情報を提供したいという意図があったためです。

明確なキャリアがまだ描けていない方には、御三方のキャリアが良いロールモデルとなればと思います。
また、明確なキャリア目標がある方には、ヒントとなる情報が提供できれば幸いです。

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