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Googleの評価制度を参考にした失敗から学ぶ、自社の文化に寄り添った評価制度のエンジニア組織とは?

本連載では、先進的な取り組みをされている企業のCTOやVPoEの方々と、ファインディCTOの佐藤将高による「エンジニア組織の成長」に焦点をあてた対談インタビューをお届けします。

第2回のゲストは、株式会社BuySell Technologiesで取締役CTOを務める今村雅幸さん。今村さんはこれまで、スタートアップの創業CTO、組織の急成長とテックカンパニー化を担うCTO、そして上場後の組織に変革をもたらすCTOと、さまざまな形でのCTOを経験されています。

CTOという仕事を”天職”だと語る今村さんに「CTOとして一番楽しいのは?最も苦労したことは?」「最も大きな決断をしたタイミングは?」そして「エンジニア組織づくりについて」や「これからのチャレンジ」までFindyCTO佐藤がお話を伺いました。

※当対談インタビューは、感染対策・検温を行なった上で実施しております。

■プロフィール

株式会社BuySell Technologies 取締役 CTO 今村 雅幸
2006年ヤフー株式会社に入社。Yahoo! FASHIONやX BRANDなどの新規事業開発に従事。2009年に株式会社VASILYを創業し、取締役CTOに就任。200万人が利用するファッションアプリ「IQON」のプロダクト開発やエンジニアリング組織をリード。2017年にVASILYをスタートトゥデイ(現ZOZO)に売却。会社統合とともに2018年4月、ZOZOテクノロジーズの執行役員に就任。CTOとしてZOZOのプロダクト開発やエンジニア採用・教育・評価などのエンジニアリング組織マネジメント、情報システム、セキュリティリスクマネジメントなど、幅広くDXを推進。2021年3月に取締役CTO就任。

ファインディ株式会社 取締役 CTO 佐藤将高
東京大学 情報理工学系研究科 創造情報学専攻卒業後、グリーに入社し、フルスタックエンジニアとして勤務する。2016年6月にファインディ立ち上げに伴い取締役CTO就任。大学院では、稲葉真理研究室に所属。過去10年分の論文に対し論文間の類似度を、自然言語処理やデータマイニングにより内容の解析を定量的・定性的に行うことで算出する論文を執筆。

さまざまな形でCTOを経験した上で、一番楽しいのは”今”

佐藤:よろしくお願いいたします。まずは改めて、今村さんの自己紹介をお願いできますか?

今村:経歴は、新卒でヤフーに入り、ソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートさせました。ヤフーでは新規事業開発に携わり、​3年ほど勤務。その後、当時一緒に働いていたPMと、VASILYというファッション×ITのサービスを行う会社を起業しました。

そのスタートアップでは8年ほど、VCから資金調達したりしながら経営して、エンジニア組織を作ったり、プロダクトをグロースさせたりするところを担っていました。2017年には、VASILYをZOZOに売却。そこからZOZOにジョインし、テックカンパニー化していくことをミッションとして、CTOを務めました。

そして、ZOZOで3年CTOを務めた後、2021年春にBuySell Technologies(以下:バイセル)に移ってきました。現在は、バイセルでCTOをしながら、日本CTO協会の理事をしたり、出資元ファンドの他の出資先企業とコラボレーションしたりしています。

佐藤:今お話いただいたように今村さんは、スタートアップの創業CTO、組織の急成長とテックカンパニー化を担うCTO、そして上場後の出来上がった組織に変革をもたらすCTOと、さまざまな形でCTOを経験されています。これに関して、率直に「どれが一番楽しいですか?」と聞いてみたいと思うのですが、いかがでしょうか。

今村:全部楽しいですよ(笑)。一番楽しいのは、たぶん今でしょうね。それはシンプルに、常にアップデートされていて、体験したことがないことを経験するためです。

どのフェーズにおいても、過去の経験を活かしながら新しい課題を解決し続けてきたので、ベンチャーの時もZOZOの時も楽しかったですが、今が未知の課題を解決していくという意味で一番楽しいですね。

佐藤:前職では経験されていない部分というと、例えばどういったところがありましたか?

今村:例えばZOZOの場合は、すでにエンジニアが100人くらいいる状況でM&Aが行われて、我々が採用したVASILYのエンジニア20名とともに、ZOZOを改革していくという形でした。要は、改革をリードする人たちがいたんですね。なので、その人たちをいかに活かしていくかが重要でした。

一方、今のバイセルはそういう人を採用するところから始めなければならない。そこが全然違うところだと思いますね。リソースがある状態から改革するのと、ない状態から改革するのは全然違うなと。

佐藤:今村さんの中に、「こうしていきたい」という構想があると思うんですが、僕としては人が1人で出来る範囲ってそこまで大きくないと日々強く感じていて。今村さんの思想を理解して一緒にやっていける人を採用していくのが、まず難しいですよね。

今村:そうですね。それに、すでに在籍しているマネージャーの方々にも、新しい考え方をインプットして行動を促していく必要があるので、そういうところは新しく人を採用することと並行してやっています。

最も苦労した、2つの異なる文化を融合させる組織づくり

佐藤:新しいフェーズを経験される中での楽しさがあるというお話でしたが、逆に今までの経験の中で大変だった場面というと、どんなことがありましたか?

今村:一番大変だったのは、間違いなくZOZOのエンジニア組織づくりですね。2つの異なる文化を融合させていくところが一番難しかったなと思います。

佐藤:なるほど。2つの文化を融合させていくにあたって、具体的にはどういったところに苦労されたのでしょうか?

今村:結局、まったく異なる2つの文化を融合させる時に一番問題になるのは、お互いをよく知らないことなんですよね。知らない人と仲良くするのって難しいじゃないですか(笑)。同じ会社と言えども、敵か味方かもわからない状態ですから、それをどうやって全員に同じ方向を向かせるかというのがすごく難しくて。

テック組織をM&Aしたとなると、新しいものを取り込む感覚で、一般的にはテック組織側に染めていくイメージをされると思うんです。でも、その考え方ではうまくいかない。それって新しい方は一歩も踏み出さないけれど、元いた人たちは2歩くらい踏み出さないといけない状態なんですよね。

だから、どちらかの文化に染めるのではなく、お互いが一歩ずつ歩み寄って、まったく新しい文化を創ることを意識していました。もともとZOZOには、すごくユーザーを大事にしてサービスのことを考えるユーザー志向が強さがあったり、一方でVASILYはユーザーに寄り添いながらも、新しい技術を使っていくテック志向があったりと、お互いに大切にしてきた文化があったわけです。

でも、お互いにそのままではダメで、どちらも変わらないといけない。お互いが変化して、まったく新しいZOZOのテック文化を作っていきましょうと。そのために、どう行動を変えていくべきなのかを全員に説得するようなコミュニケーションを取っていました。新しい文化を作るんだということは繰り返し伝えていましたし、それは今でも残っているんじゃないかと思います。

何度も失敗したリプレイスを内製で行う、大きな決断

佐藤:ZOZOのような大きな組織でテクノロジー分野を変革していくのは、CTOとして大きな選択を迫られることが多かったのではないかと思います。

1人であれば簡単に決められるようなことであっても、大きな組織ではさまざまな立場の人に配慮した決断する必要が出てきますよね。そうした中で、今村さんが最も大きな選択をしたタイミングは、どんな時でしたか?

今村:ZOZOのリプレイスを内製でやっていくと決めた選択だと思います。もともとZOZOは、外部ベンダーを交えてリプレイスをしようとしていたのですが、うまくいかなかった。僕らが入る前に、3回くらい失敗していたんですね。

20年前のプロダクトなので、全部VBScriptで動いていたし、オンプレミスだったし、さすがになんとかしなければならないなと。けれども、そもそも規模が大きすぎる上に、新しい技術を扱う人が少なかったので、その状態で内製化を本気でやっていくかは結構悩みました。

やり切れる人材が揃っているわけではない中で、リプレイスを「やる」と決めて、進めながらできる人を採用していくという、その決断は強い意志が必要でしたね。

佐藤:腹をくくっての決断だったと思うのですが、その際に最も苦労されたことは何でしたか?

今村:間違いなく採用です。リプレイスすると決めたものの、当時のエンジニアはそもそもクラウドを使ったことがある人がかなり少なく、リプレイスを進めていける人材が圧倒的に不足している状況だったんですね。なので、どういう設計にして、どういう人を採用すべきなのかを、しっかり決めて進めていく必要がありました。

その時は、みんな「本当にできるのかな?」みたいな感じだったんですよ。状況を考えれば、当たり前なんですけど(笑)。だから、「いつまでにこういう状態にします」と、経営陣を含めてみんなを説得して進めていきました。

経営陣には必要性を説明しつつ、本当にできるのかと思っている現場に自信を持たせながら、実際にそれを進めていくリード層のエンジニアを同時に採用する。技術的なことと組織的なことを、同時に全部なんとかしなければならず、ものすごく大変でしたね。

やらずに突き進むこともできたと思うんですが、過去に何度も失敗してきたリプレイスを、あえて「やる」と決めて、まわりを巻き込んでいくというのは、大きな選択だったなと思います。

佐藤:最近は、Webやアプリを作っているエンジニアからすると、「ZOZO=イケてる」というイメージが強いと思っていて。僕から見ても、優秀な方々がいる素敵な企業で、「あんな風になるにはどうしたらいいんだろう」と日々考えていたりします。

今村:本当に最近ですよね、そう思ってもらえるようになったのは。ここ1~2年のことだと思います。

佐藤:今村さんの功績が非常に大きいんじゃないかと思います。

今村:いなくなった後も、ちゃんとまわっていて良かったです(笑)。

世の中を変えるリーダーとして、CTOを憧れの職業に

佐藤:今村さんの目指す将来像についても、ぜひお伺いしたいと思います。僕たちは今、子どもたちが安心して過ごせる日本をつくるために、再びものづくりやテクノロジーが強い国にしていこうと、Findyの事業を伸ばしています。

以前、今村さんとランチをさせていただいた際に、「CTOを子どもの世代に誇れる仕事にしたい」という思いをお話しいただきました。今村さんがCTOをどんな存在にしていきたいと考えているか、改めて教えていただけますか?

今村:僕自身はCTOという仕事を天職だと思っていますし、とてもやりがいのある仕事だと思っています。なので、CTOを子どもが憧れる仕事にしたいというのもそうですし、実際に世の中を変えていくリーダー的な存在にしたいと考えています。

技術者というと縁の下の力持ち的な、上が決めたことをやっているイメージを持たれがちじゃないですか。そうではなく、自分の持っている知見や技術を組み合わせて、社会的な課題の解決を自ら考えて実行していく。そういうリーダーシップを持った人たちを増やしたいですし、そういう姿に憧れを持たれるような職種にしたいと思っています。

佐藤:僕も同じように、もっともっとCTOが良いものだと布教できたらと思っているんです。今村さんが冒頭でおっしゃっていたように、CTOをしている人たちが、常に新しいことにチャレンジして、自身の仕事をすごく楽しんでいる、というイメージも良いですよね。いつか今村さんと、子どもたちの世代に対して何かできたらいいなと思います。

今村:世の中を変えられるってすごいことですし、なかなかそんな職業ってないですよね。世の中の仕組みを変えてしまうようなものを作れる。エンジニアはそれを実現しやすい職種だと思うので、もっと注目されてほしいと思っています。

佐藤:CTOという職業がもっと輝いて、もっと注目を浴びるような状況を、ぜひ一緒に作っていきたいですね。

今村:そうですね。そうなったらCTOを目指す人が増えて、CTOを目指した人たちが、世の中をもっと便利でにぎやかにする仕組みを、いろんな分野で生み出してくれるはずですから。変革をリードできる人を増やしていくというのは、僕が今この職業をしている上で、目指さなければいけない世界なのかなと思っています。

人が替わっても持続可能な、スケールできる仕組みを作る

佐藤:今村さんはこれまでに、拡大していくエンジニア組織づくりをいくつも経験されてきたと思います。組織づくりをする上で、どんなことを大事にされていますか?

今村:これは1つしかないですね。仕組みを作ることです。組織というのは、すべてのレイヤーにおいて、人が入れ替わりますよね。ということは、人が替わったり、増えたり減ったりしても、持続可能な仕組みを作らなければなりません。今この瞬間だけ良い組織を作るのではなく、どんどんスケールしていける仕組みを作ることが大切です。

なので、今まで取り組んできた評価制度も採用も、それがどういう仕組みで行われるのか、きちんとプロセスを可視化してきました。もし僕が入れ替わったとしても、ちゃんと仕組み自体が残って運用され続けることを、すべてにおいて意識しています。

佐藤:評価制度に関しては特に、曖昧さがあるとわだかまりの元になりやすいですよね。

今村:そうですね。だから、仮に僕がいなくなったとしても評価制度が正しく機能するような、そういう仕組みが必要です。それこそ、トップがいなくなると「なぜやるのか」が薄れてしまうことって結構ありがちだと思うんですよね。

「なぜテックブログをやるのか?」とか、「なぜ評価制度があるのか?」とか。それらをちゃんと明文化して残しておいて、何かあったとしてもそれが引き継がれて、ちゃんとまわる仕組みづくりを全方位でやっていました。現に、僕がいなくなってもまわっていると思うので。

佐藤:今回のインタビューにあたって、改めて今村さんの書かれたブログなどを拝見させていただいたのですが、例えばテックブログはどのような公開フローで出すのか等、そういったことについてたくさん書かれていますよね。

今村:客観的に見ても、やり方や意義がわかるものを作ろうと意識していました。例えば、採用のフローもそうですし、外に向けた技術的なPRやブランディングにおいても、スポンサーになる基準や、登壇する際の承認フローを明確にしています。

プロダクトを作るにあたっても、技術選定やセキュリティに関するガイドラインを全部きちんと準備して、エンジニアが増えたとしても、同じ方針でものづくりができるように整えてきました。それは、ZOZOの規模感でも有用だったなと感じます。

生産性の向上に必要なのは、エンジニア1人ひとりの成長

佐藤:エンジニア組織の生産性という観点についても、お伺いしたいと思います。例えばFindyでは、「爆速顧客価値提供」という考え方で、エンジニア組織のメンバーは効率やスピードを強く意識した開発を行っています。今村さんはエンジニア組織の生産性を上げるために、どのような考え方でどんな取り組みをされてきましたか?

今村:エンジニア組織の生産性を上げる取り組みというと、短期的なものから中長期的なものまでいろいろあると思いますが、やっぱり絶対的に必要なのは、個人の能力をちゃんと伸ばすことだと考えています。

プロジェクト管理にも、例えばスクラムを導入するとかスプリントを組むとか、いろいろありますが、それは1つのテクニックに過ぎないと思っていて。それよりも、1人ひとりのエンジニアの能力を伸ばす仕組みを整えることが、最も効果的だと思っているんです。

その中でも、成功したと思っているのは評価制度ですね。どうやってエンジニアを成長させるかという仕組みを、きっちりと評価制度として作りました。

まず、そもそも”生産性の高いエンジニア”とは、どういうエンジニアなのかということを、社員全員が認識している必要がありますよね。なので、その会社における良いエンジニア像に必要な要素を設定して、それらを評価制度に落とし込んでいきました。

半年や1年では成果が見えにくいのですが、2~3年くらい経つと、評価制度の指針を目指して行動した人たちがものすごく伸びたんです。指針がないまま経験を積むのと、身につけるべき能力がちゃんと示されていて経験を積むのとでは、成長の度合いが全然違うなと。

そうやって若手が成長して活躍していくことで、結果的には組織としての生産性が上がるということは、すごく実感しました。

佐藤:”生産性の高いエンジニア”がどういうエンジニアなのか、認識を合わせるというお話がありましたが、それはどのようなプロセスで決めていったのでしょうか?

今村:ZOZOの場合は、入って1年後くらいに全エンジニアへアンケートを行いました。そこで、ZOZOにいるエンジニアの「この人のこういうところが良いと思う」という内容を書いてもらって、それを集約して作りました。評価制度は何回か変わっていますが、すべての評価制度に組み込まれています。

佐藤:そこで多く挙げられていた内容が体現できていれば、等級制度でのグレードが高くなるようなイメージでしょうか?

今村:はい。グレードが上がるにつれて、その達成の度合いや難易度が高くなっていくような感じですね。

世間一般の理想を掲げるのではなく、自社の文化に寄り添う

佐藤:上手くいった取り組みについてお話いただきましたが、逆にこれはあまり上手くいかなかったという取り組みはありましたか?

今村:上手くいかなかったのは、評価制度で言うと、世間一般で言われている理想のエンジニア像をそのまま当てはめようとしたことですね。VASILYのものを当てはめようとしたり、Googleのものを参考にしたり、そういうのは上手くいきませんでした。やっぱり会社ごとに文化が違いますし、他社で上手くいったものをそのまま取り入れても、上手くいくことはなかったですね。

そういう経緯があったので、評価制度は過去に何度も変わっています。エンジニアに聞いて新しく作り直して、やってみてさらに直して……ということを毎年やっていました。ただ理想を掲げるのではなく、社内の人たちの考え方をきちんと吸い上げて、自社の文化に寄り添ったものを作る必要があると感じます。

佐藤:上手くいかなかったと判断された要素としては、例えばどのようなものがありましたか?

今村:社員の反応が著しく悪かったですね。「手間だけかかって結局給料は全然上がらない」とか「きちんと評価されていないと感じる」というエンジニアが出てきたりして、そこで上手くいっていないという判断になりました。

佐藤:他社のさまざまな事例がある中、しっかりと自社に向けてローカライズして納得感のある評価制度を作られたと。すごく勉強になります。

今村:それから、評価制度って基本的に、みんな一度作ったら変えてほしくないと思うものじゃないですか。これに関しては、僕は変わるものだとはっきり伝えていました。「そのうち変わるけど、良い方向にしか変わらないから信じてくれ」と。

つまり、変化していく文化も合わせて醸成していたんです。変わっていくのが当たり前だと伝えることで、評価制度や会社の仕組みが変化していくことへのネガティブな感情が生まれないようにしていました。

佐藤:弊社でも「変わらなかったら、逆におかしいと思った方がいい」と伝えていて、そこの意識が違っていると不安に思うメンバーがいるというのは感じます。

今村:評価制度は特に、変わることを良く思わない人もいるので、「変わるのは組織が進化しているということだから」と、納得してもらえるような空気づくりはしていましたね。

世の中の在り方を変えるような、新しいプロダクトを

佐藤:それでは、最後の質問になります。今村さんはこれまでに多くのチャレンジをされてきていて、僕個人としてもすごく尊敬している方の1人です。今村さんが考えられている、今後のチャレンジについて教えていただけますか?

今村:僕は今より経営者に近いレイヤーにいるので、単にプロダクトを作るだけでなく、新しい事業を作っていけるCTOを目指しています。

しかも、今までやったことのない大きな規模感で、業界構造や産業を変えられるような事業をやっていきたい。それを世間ではDXと呼ぶのかもしれませんが、「このプロダクトが出てきたから、世の中の在り方が変わった」と言われるような、そういう事業を生み出したいと思っています。

僕がバイセルを選んだ理由の1つは、より大きなマーケットがあるから。リユースマーケットは今3~4兆円ほどですが、我々が狙っている潜在的なマーケットは37兆円くらいあるんです。

不要になったものを売ろうとした時、今世の中にあるソリューションは、メルカリに出すかお店に売るかくらいですが、それをできる人って結構限られているなと。一般の資産における8割以上を50代以上の方が持っている現状がある中で、50代以上の人たちがみんなメルカリを使いこなすのは難しいと思うんですよ。

ここに解決できる社会的課題があるんじゃないかと思っていて。そういった大きなマーケットがあって、かつ技術で解決できる余地があるところに対して、在り方を変えていくようなサービスをもっと提供していきたいと考えています。

佐藤:今村さんのチャレンジを、五反田の隅から楽しみにしております。

今村:ありがとうございます(笑)。それから今、もう1つやりたいことがあって、それは次世代CTOの育成です。僕より若い世代のCTOたちを、さらに成長させていきたい。CTOをしている人やCTOを目指す人に対して、自分の経験で役に立つものがあれば、上手く伝えていきたいと思っています。

佐藤:夢が大きくて良いなと改めて感じました。今村さん、本日はお時間いただきありがとうございました!